【ご挨拶】
寒さが身にしみる12月、皆様いかがお過ごしでしょうか。年末の慌ただしい時期に突入しましたが、暖かい気持ちで素敵な時間を過ごしていただけるよう、心よりお祈りしています。
先日こころ温まるニュースを読みました。長崎県樫山地区にある小高い山「赤岳」の麓にある「天福寺」に1978年、少し離れた地区に住む人々が訪れました。寺は貧しく、本堂の床は抜け落ちそうで、天井からは雪が舞い込む有り様。お布施の収入は月6万円ほどしかなく、檀家に改築費用を募っている最中だったそうです。訪れた住人たちは約400万円もの寄付を申し出たそうです。しかし、彼らは仏教徒ではないという。「私たちは潜伏キリシタンの子孫です。お寺のおかげで信仰と命を繋ぐことができました。少しでも恩返しがしたい」とおっしゃったそうです。
実は、天福寺は1688年に建立された曹洞宗のお寺でしたが、キリスト教が禁止され厳しい取り締まりがあった江戸時代に、危険を冒して潜伏キリシタンを檀家として受け入れ、積極的に匿っていた歴史があるそうです。「数百年後の恩返し」はあまりにも突然であり、申し出を受けた住職は驚くと同時に、ある仏語『三時業』が脳裏に浮んだそうです。三時業とは、善悪の業の報いを本人が受けずに死んだとしても、生まれ変わった後に報いを受けるという教えである、とのこと。数百年前に隠れキリシタンを守った寺の先人たちの善業に対して、本当に世代を超えて報いが来たと実感したそうです。互いに認め合う日本人の宗教観や自然観が成し得た業であり、寛容の精神がなければ250年間も「潜伏」などできない、と。天福寺の歴史を振り返ると、現在のニュースで取り上げられている国際社会の動向に深い懸念を抱きました。大国の覇権争い、各地で起こる戦争、危機、対立と分断が進み、他者を思いやる寛容性を失っているように感じます。
少し早いですが、皆様どうぞ良いお年をお迎えください。
|