【コラム】訴訟ホールド (Litigation Hold/Legal Hold) への対応
電子文書や電子メールの保存・破棄サイクルを規定するポリシーに従った通常の破棄作業は、訴訟の発生が判明、あるいは予測可能な時点から直ちに停止し、以後データに変更を加えることなく関連文書の保全を実施しなければなりません。このプロセスを訴訟ホールド(Litigation Hold/Legal Hold)と呼び、eDiscovery(電子証拠開示)における最も重要なステップの一つとなります。
今回はその流れとポイントに関して以下に簡単に述べてみたいと思います。
保全義務
まず、上述のように訴訟の発生が判明、あるいは合理的に予測可能な時点から直ちに通常の文書保存・破棄作業を停止し、関連文書の特定と保全を行う義務が発生します。ここでキーとなるのが、どの時点を「訴訟が予測可能である」と見なすかということです。厳密な起点が規定されていないため、判例法に従った判断を下すことになりますが、従業員からの抗議や申し立てがあったり、訴訟を示唆するような書面が送付された時点、あるいは裁判所からの召喚状を受領した時点などが一般的と考えられます。このタイミングを見誤ると保全が遅れ、証拠文書の破棄に繋がる恐れがあります。
保全通知
保全義務の発生後には、カストディアン(投資家に代わって、株式や債券などの有価証券の保管・管理を行う金融機関のこと)へ保全の義務を通達 し、さらに保全手順を説明する必要があります。ただし、カストディアン自身による保全は、収集不備に繋がる可能性が高いため、対象データが非常に限られている場合以外は避けるのが望ましいそうです。全カストディアンからの保全通知の受領確認や、内容への同意取得を確実に行うため、最近ではワークフローの自動化も進んでいます。
保全の実施
保全義務の対象となるのは訴訟に関連するデータのみです。大規模な保全では、綿密に体系化したプロセスが欠かせません。その場しのぎの手動プロセスや拡張性のないプロセスでは、通常業務への影響も大きくなり、保全費用も増加してしまいます。また、先ほども述べたように、カストディアン自身による保全は出来る限り避けるべきです。法的・技術的知識の欠如から、関連証拠の特定に見落としがあったり、保全過程で文書のメタデータに変更を加えてしまったりするリスクが高く、さらに最悪の場合には、故意の証拠破棄という結果も引き起こしかねません。
次回は、訴訟ホールドにおける課題やリスク、それらを避けるためのプラククティスに触れてみたいと思います。
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